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Stories of coins and color stones

ナポレオン100フラン金貨のお話し

2015年8月

もし150年も前に作られた金貨を、地金(じがね)価格程度で購入できるとすれば、みなさんはどうされますか?150年前と言えば日本の江戸時代の末期で、日本ではまだ小判が使われていた時代です。

そんな昔の金貨が地金(じがね)の価格で買えた時期が、ほんの10年前まであったのですよ・・・しかも決して大量に作られたコインではありません、年号全てあわせても、せいぜい10万枚程度しか鋳造されなかった、どちらかと言えば希少性のある金貨です。

今回ご紹介するのは、フランスで1855年から1869年にかけて発行された、ナポレオン3世の100フラン金貨です、このコインはフランス史上最初の大型金貨で、重量は約32グラム、金の純度は90%です。

デザインもなかなかかっこいいですよ、以下のように表はフランスのナポレオン三世で、裏は皇帝の紋章です。

2007年に発行された某コイン商のカタログをみますと、このナポレオン100フランの価格の安さに驚きます。代表的なものを以下あげますと。

  1. 1857年 EF ⇒82,000円(地金価格+10%以内)
  2. 1858年 EF- ⇒78,000円(地金価格+10%以内)
  3. 1855年 EF ⇒95,000円
  4. 1869年 EF- ⇒82,000円(地金価格+10%以内)
  5. 1868年 VF-EF ⇒120,000円

などといった金額表記がみえます。上記のように当時の地金価格の10%増し程度が、このコインの相場だったことが解ります、⑤のみ少し高いですが、1868年のこのコインの鋳造枚数は、わずかに789枚の大特年で、現在の相場でおよそ60万円ナリです。当時と比べ金の価格が騰がったということもありますが、この金貨の価格上昇は、そんな生易しいものではありません。ちなみに他の並み年号のものでも、今ならEFクラスで30万円ほどはいたします。

思えば不思議なものです・・・僅か10年前、なぜこのナポレオン金貨は地金型金貨(じがねがた金貨)とみなされていたのでしょうか。そしてなぜ今は地金の2倍から4倍程度の値をつけているのでしょうか。

僕自身の収集歴は40年以上になりますが、そういえば2007年時点でも、このコインの価格に疑問を持っていませんでした・・・。当時でもこのコインは有名なコインで、だれしも最初に持ちたいコインの一つだといってよいでしょう、にもかかわらず、おそらく僕だけでなく収集家は皆このコインの価格に疑問を持っていなかったのです。

今にして思えば、そこにヒントがくされているように思います。人は(もちろん僕自身も含め)いつも目にしている光景を、当然のこととして疑問を持たずに受け入れているもののではないでしょうか。たった789枚しか作られなかった150年前のコインが、地金価格の僅か1.5倍で売られていたとしてもです。

以上の100フランのお話は、世間の相場というものは必ずしも適正でないことを象徴しているような気がするわけです。

そのような観点で投資対象としてのコイン相場を見ますと、まだまだ不思議なことがいっぱいあります。

例えば古代インドの金貨です。紀元2世紀~3世紀ごろのインド金貨は、小型ながらそのデザインといい、希少性といい素晴らしいコインだといってよいでしょう、にもかかわらず、その価格ははなはだ評価不足と言ってよいでしょう。同時代のローマ帝国の金貨も同様で、さきほどクシャン朝インド金貨と同様もっと評価されていいと思います。ちなみにこのあたりの金貨の相場は、クシャン朝インドで20万円~50万円。ローマ帝国の金貨で60万円~120万円ほどです。

あるいはプトレマイオス朝の古代エジプトが鋳造した超大型金貨、オクタドラクマは希少性から考えて、現在の相場250万円は安すぎると思います、少なくともヨーロッパ中世の10ダカット金貨(800万円~1500万円ほど)やイギリスの5ポンド金貨(400万円~800万円ほど)程度またはそれ以上の価格でないと説明がつきづらいでしょう。オクタドラクマ金貨に限らず、古代ギリシャ・ローマの金貨・銀貨は安値に放置されています、デザインもバラエティ豊かで、みていて飽きません。投資対象として見た場合、相場帯の訂正余地は大きいといってよいでしょう。

銀貨でいうなら神聖ローマ帝国の2ターレルの割安感が強いです。収集の中心は1ターレルといってよいのですが、どうも1ターレルは残存枚数が多すぎて、投資対象としてみた場合イマイチのような気がします。2ターレルは1ターレルに比べ倍の重量をもち、残存枚数も僅かです。イメージでいうなら1ターレルが10枚値に対し、2ターレルは1枚ほどといったところです、現在の相場は1ターレルで10万円前後(EFクラス、もちろん銘柄や時代にもよりますが)、これに対し2ターレルのEFは20万円~30万円ほどです。相場はジワジワ上がりつつありますが、僕から見ればまだまだ評価不足です。デザインも精緻で変化に富み、投資対象として面白いでしょう。

さてさて最後に再びナポレオン100フランです。

数年前に火が付き急騰したこのコインですが、面白いことに市場に出てくるのは、せいぜいEF+までで、UNCはもちろんAUクラスですら、滅多にお目にかかりません。当然のことながらAUクラス以上の価格は急激に高くなり、現在の相場はAUで40万円ほど(並み年)、UNCともなれば80万円(同)から場合によって100万円の声がかかり、十分に投資の対象になるでしょう。もし皆さんがAUクラス以上のこのコインを目にされたら、購入を検討されてよろしいでしょう。