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From the economic column I wrote in the past

価格変動と格差

2016年7月

「価格変動の大きいポートフォリオを保有した場合、一部の投資家に富が集中する」

これは金融工学の世界ではよく知られた現象です。例えばこの世の中に定期預金しかなかったとすればどうでしょう、あらゆる投資家は、例えば年利1.2%といった定率の収益を享受でき、運用成果の差は生まれません。

これに対し世の中に株式しかなかったとすればどうでしょう。つまり世界中の人にとって株式投資しか選択肢がない状態です。この状態では、例えばうまく銘柄を選択し、良いタイミングで売買を繰り返すことによって大勝ちする人もいれば、逆にソンばかりする人もいるでしょう。そのような運用の巧拙や運によって、長期的には大きな成果の差が生まれることになります。では投資家全員の運用成果を俯瞰した場合、その分布はいったいどのようになっているのでしょうか。

例えば株式投資の平均的な収益率を年率5%と仮定した場合、5%を中心に上下対称に分布するのでしょうか・・・いえ、そのようなことは起きません。勝つ方向は青天井の広がりがある一方で、負ける方には限界があります。従って一部の人が超大勝する一方で、大半の投資家はマイナスに沈むという不思議な現象が起きるわけです。簡単にいえば一部の勝者の勝ち分を、大半の敗者が少しずつ負担する構図です。これは理論的に証明可能ですが、やや専門的すぎますので、ここでは割愛させていただきます(いつかホームページでまとめようと思いますが・・・)。

このような理論は、私たちの実体験に照らし合わせてさほどの違和感はないでしょう。例えばFXや株の証拠金取引で大勝ちする一握りの投資家はいますが、勝っている人の割合は決して多くはなく、むしろ大半の投資家は負けています。これは感覚的にも上記の理論を裏付けているのではないでしょうか。

つまり投資対象の価格変動率(以下「ボラティリティ」)が大きければ大きいほど、一部の投資家に富が集中し、大半の投資家は損失を被るというわけです。もちろん私たち自身がこの一握りの成功者になるに越したことはありませんが、そのためにはよほどの才能や努力、運に恵まれなくてはなりません。であればせめて保有資産のボラティリティの抑制に努め、すくなくとも大勢の負け組に入らない工夫が必要ではないでしょうか。

では私たちはどのようにして資産のボラティリティを下げることができるのでしょうか。

昔からよくボラティリティを下げる唯一の手段は資産の分散にあるといわれてきましたが、現代においてもこの原則は生きているといえるでしょう。

いたずらに高い収益率を追及することなく、たとえば株に対してヘッジファンドや債券を組み合わせ、お互いの価格変動を相殺させることが重要ではないかと思います。さらにこれらペーパーアセットとは異質な現物資産を常に一定額組み入れておくことも重要で、できれば現物資産の中でも不動産やコイン、貴金属など、異種の資産への分散を行うべきではないでしょうか。このような質的分散が、資産全体のボラティリティ抑制に有効であることは間違いなく、結果的に私たちの負け組入り回避に貢献するのではないでしょうか。

昨今よく「格差の拡大」が話題になりますが、その理由の一つがこのボラティリティの拡大にあることは間違いないでしょう。先月も申しましたが、特にリーマン・ショック以降、マネーの総量は急拡大し、株にせよ債券にせよ商品相場にせよ、さまざまな金融商品のボラティリティは徐々に高まっているように思います。金融市場のグローバル化とネットワークの高速化もまた、ボラティリティを拡大させているようにみえます。

しかも今後の金融市場を見渡した場合、ますますこのボラティリティは高まってゆく可能性が高いのではないかと思います。私たちは大半の負け組に入らないよう、備えが求められているのではないでしょうか。

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