スマートフォン版に切り替える

From the economic column I wrote in the past

通貨と中央銀行の近未来

2016年10月

大量の通貨を市場に供給したり、金利をマイナスにしたり・・・中央銀行の政策は世界的に異次元に入りつつあるといってよいでしょう。そういえばちょっと前、日銀が政策金利をゼロに下げたとき、「現在の金利は1600年代のイタリアのジェノバ以来の超低金利だ」などと言われていたのを思い出します、あれはたしか15年ほどまえだったでしょうか。当時は日本だけが異常で、超低金利は日本固有の問題だと考えられていたものです。

それがどうでしょう・・・今ではマイナス金利はすっかりと世界の先進国の標準になってしまいました。

なぜこのような異常が定着してしまったのでしょうか、以前からこのレポートやメルマガで何度もお話ししてきましたが、最大の要因は世界の成長性の低下だと僕は思います。成長性が低いから資金需要が少ない⇒資金需要が少ないからお金の借り手が少ない⇒お金の借り手が少ないから利子を低くせざるを得ない。このような経路で金利が下がっているのではないでしょうか。

では金利や通貨の近未来は、いったいどうなってしまうのでしょうか・・・

借り手がいないから金利を下げる、金利をゼロにしても借り手がいなければ、ジャンジャン紙幣を印刷しマイナス金利にしてしまおう。今後も世界の中央銀行がこのような政策を続けるなら、いずれ中央銀行の信認は損なわれ、通貨に対する信認も低下することにならないでしょうか。

その兆候はすでにみられます。ここのところビットコインの存在感が徐々に増していますが、大げさに言えばこれは中央銀行や、既存の貨幣システムに対する不信任の裏返しかもしれません。ビットコインを保有する人の多くは、値上がりを求め投資目的で購入しているようですが、どうもそれだけではないような気がするのです。例えば日本国内ですでに2500以上のお店でビットコインを使えるそうで、これは昨年末に比べ4倍です。なかには電気代をビットコインで支払える工夫も進んでいるようで、ビットコインを、単純にFXの証拠金取引と同列に考えるべきではないようです。

世界をみても同様で、ビットコインを含む仮想通貨の残高は、世界全体ですでに1兆円まで膨らんでおり、利用者は1300万人と、この2年間で3倍に増えたといいます。

注)2016年10月14日、日本経済新聞朝刊より

数年前に日本最大の取引会社が破たんしましたが、それにもめげずビットコインの存在感はジワジワ増してきているといえるでしょう。運営会社の信頼性の問題や、使える店舗の数などの問題があるなか、なぜビットコインは増殖を続けているのでしょうか。

海外送金の手数料の安さや簡便さは、既存の銀行による金融システムを補完する機能ですし、なにより貨幣における中央銀行のように特定の管理者がおらず、発行残高に上限が設けられているところも評価されていると思います。

一言でいえばビットコインを主とする仮想通貨は、一時の流行や投機の対象ではなく、長らく続いてきた中央銀行による貨幣の管理システムの限界を、補完するか形で台頭しつつあるのかもしれません。

もし仮にですが・・・ビットコインのような仮想通貨で事足りるということになればどうでしょう、ドルも円もユーロもない仮想通貨だけの世界が到来し、いずれ世界の中央銀行はその歴史的役割を終えるのかもしれません。