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From the economic column I wrote in the past

なぜ富は集中するのか

2017年4月

私たちの祖先が野山や草原で採集生活や狩猟生活を行っていたころ、おそらく貧富の差などなかったのではないでしょうか。獲物を狩る技術に優れた人、木のみを上手に見つけることができる人、そのような人達は比較的豊富に食べものを摂取できた可能性はありますが、それは貧富の差というレベルではなかったと思います。

そもそも退蔵する対象がなく、獲得した食料をすべて消費する社会において、貧富の差など生まれようがありません。貧富の差というものは農業が成立し、食料という富の退蔵手段が生まれ、初めて生じるものではないでしょうか。それでも農業成立以降の比較的初期の時代においては、さほどの生産能力はなく、したがって退蔵すべき食料の分量もさほどのものではなかったはずです。

時代が下り農業の生産性が高まるにつれ、退蔵すべきコメや穀物などの分量が増え、はじめてヒトは資産というべきものを手にしたのではないかと思います。その資産の総量は、主な産業が農業から工業や鉱業に移動する中でさらに増えると同時に、退蔵のしやすさ、
つまり腐敗や劣化のしにくさという点で、飛躍的に増えていったのではないでしょうか。

中世以降になると貨幣経済が発展し、モノをナマな形ではなく、貨幣と交換して保存することができるようになりました、その結果、物理的な保管場所の制約がなくなり、社会における退蔵資産の総量は飛躍的に増えていった・・・さらに近年コンピュータ技術の発展によって、貨幣がデジタルのデータに置き換わり、物理的な保管場所の制約や印刷、鋳造の手間から解放され、発行される貨幣の量は飛躍的に増えたのだと思います。

貧富の格差は、このように貨幣の発行量の急拡大や富のデジタル化がベースになっていると思います、ただしそれだけでは説明はつきません。なぜなら近年「超富裕層」とよばれる一部の人たちが実現した富の拡大速度は、たとえば株や債券への投資から得られる収益率を、おそらく数ケタ単位で上回っているからです。ではなぜ世界のお金持ち上位62人の資産が、貧困層36億人の資産に匹敵するほど、異常な富の集中が起きてしまったのでしょうか。

そのからくりは、非連続的な資産の拡大方法を彼らが獲得しているからだと思います。例えば年間に10%のリターンを期待できる投資対象があったとすればどうでしょう。初年度に100をこの対象に投資した場合、10年後の期待値は259です。100が259に増えるのはスゴイことだと思いますが、昨今の超富裕層の資産膨張速度はこんな甘いものではありません。つまりこのような連続的な資産の増加方法ではなく、非連続的な増加方法を獲得していると考えるしかありません。ではその非連続的な手段とは何でしょうか・・・

その正体はレバレッジだと思います、資本市場を活用して他人のチープなマネーを大量に集める一方で、それを不動産、株や債券に投じる、場合によってはそれがM&Aという形をとることもあるでしょう・・・法的な障害があればロビー活動や人的ネットワークをフル活用して政治をも動かす、倫理上の問題はいっさい斟酌しない。おそらく先のサブプライム・ショックもこのような過程を踏みつつ起きたのではないでしょうか。

トランプ大統領は金融機関に対する規制緩和の方向と聞きますが、もし実現すればいったいどうなるのでしょう。金融の世界は無法地帯に戻り、いつかまたバブルが崩壊するのでしょうか。