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From the economic column I wrote in the past

賃金アップの要請は正しいのか

2017年10月

「賃上げは企業への社会的要請だ。3%の賃上げが実現するよう期待する」

安倍さんは先日の経済財政諮問会議でこのように表明しました。企業が賃上げすれば消費が増え、安倍さん念願の脱デフレへの道筋を描けるという目論見でしょうが、果たしてうまくいくのでしょうか。そもそも日本はお隣の国とは違って社会主義ではありません、政府が民間企業の賃金まで口を出すのはいかがなものでしょう。さらに賃金は従業員の働きに対する対価です、昨今のように労働生産性が停滞するなか、労働生産性の伸び以上に賃金を増やすのは、企業にとって正しい選択肢だとは思えません。

僕はいまでもサラリーマン時代のことを時々思い出します。

当時は今と違って残業や長時間労働が当たりまえで、夜の10時、11時までの残業など珍しくありませんでした、逆に残業をすればするほど上司の評価は高まりますし、なにより残業代がもらえます。ですから残業や休日出勤が実は社員にとって正しい選択だったわけです、特に体力の有り余っている独身サラリーマンにとっては・・・。すべての会社で同様だったかどうかわかりませんし、ひとそれぞれ健康状態や体力に差はあります。が、少なくとも僕が勤めた2つの会社についてはこんな感じでした。なかには通常の勤務時間中はテキトーに仕事を流し、夕方6時を過ぎると突然バリバリ仕事をし始める、要領のいい若者などもいたものです。

といっても僕がサラリーマンを辞めてもう14年ほどになりますので、今はどうなっているか知りません。なかには電通事件に見られるような異常な職場もあるかもしれません。でも相変わらず低いホワイトカラーの労働生産性や、他の先進国と比べ長い労働時間を見ますと、やはり職場の現状は14年前とさほど変わっていないのではないでしょうか。

つまり「労働生産性が低いから賃金を上げられない」、これが会社側のロジックで、僕はこれが正論だと思います。逆に冒頭の安倍さんの要請は労働生産性という概念を無視したものであり、企業としてもなかなか応じにくいのではないでしょうか。笛吹けど踊らずというやつです。

では両者の接点を見つけることは土台無理なのでしょうか。

労働生産性を上回る3%の賃上げは無理だとしても、たとえば就労時間の3%短縮なら会社は応じられるのではないでしょうか。

どういうことかといいますと、賃金を据え置いたまま、例えば毎年3%ずつ勤務時間を短縮してゆくという考えです。このように売り上げや利益を減らさないかたちで、勤務時間だけを減らすことができればどうでしょう。おそらく企業にとって異論はないでしょうし、従業員からも歓迎されるのではないでしょうか。たとえば今年の終業時刻が18:00だとすれば、翌年は17:45、その次の年は17:30・・十年後続ければ15:30で仕事はおしまいです。

もし3時半に仕事が終われば会社と従業員の関係はずいぶん変わると思います、社員は終業後に習い事や資格取得の勉強などもできるでしょうし、副業も普通になるでしょう。今勤めている会社からの給料は変わらなくても、副業や資格の取得によって収入を大幅に増やす人もでてくるに違いありません。つまり社会全体で見た場合、実質的な収入は増えるはずで、これは安倍さんが目標にするデフレ脱却につながります。

安倍さんご希望のように、強制的に企業に賃上げを行わせたとしても労働生産性が上がるとは思えません、そこに手をつけない限り会社は持続的に賃金を上げることができません。一方で賃金を変えず就労時間だけ短縮すればどうでしょう。この場合、従業員は自然と効率を考えて仕事をするようにするはずですし、結果的に就労時間の短縮分だけ労働生産性が高まるのではないでしょうか。