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Looking for valuable coins

ペルー100ソルを深く考える

2020年11月17日

多くの方にとって今回のこのコラムは専門的過ぎるとお感じかもしれません、でも資産運用という点では大切な要素を含んでいると僕は思います、誰もが欲しいと考えるモノには、すでに向こう数年の価値上昇が織り込まれており投資対象として決しておいしくはありません。逆に「誰もがさほど興味を示さないが、実は十分な価値がある」、えてしてこんなモノが大きな儲けをもたらしてくれるものです。

そんな視点で今回のコラムを書かせていただきます、コインに興味がない人や、コインの知識がない人も、投資のエッセンスを感じ取ってもらえれば幸いです。

ペルー100ソルの魅力を3点

さて本題です、
南米のペルーには知る人ぞ知るお宝コインがあります、1951年から1970年の20年間にわたり発行され続けた100ソル金貨です。

(ペルー100ソル金貨、1962年)

このコインがお宝である理由はいくつかあるのですが、一番分かり易いのはそのサイズです、直径は3.6センチとデカイですし、何より46.8グラムもあります。1オンスが31.1グラムなので、このコインは1.5オンスほどにもなります、一方で金の品位は90%ですので、金の含有量は1.35オンス(約42.1グラム)あります、現在の金1グラムの価格は約7000円(税込み)ですので、このコインの地金価格は30万円ほどになる計算です。

このコインの二つ目の魅力はデザインです、ここ数年オーストリアの「雲上の女神」と呼ばれる100コロナ金貨が人気を集め高騰してしますが、雲上の女神の魅力の一つはデザインです。

(オーストリアで1908年に発行された100コロナ、通称「雲上の女神」)

特に日本人にこの女神像は人気があり、美しい女神さまが描かれた金貨のなかに、近年高騰したものがいくつもあります。日本人のバイングパワー恐るべしです。

そのような観点で再びペルーの100ソル金貨をご覧ください、僕はオーストリアの100コロナに負けていないように思いますがいかがでしょう。

このコインの3つ目の魅力は発行枚数の少なさです。

以下は年号別の発行枚数です

1950年:1176枚
1951年:8241枚
1952年:126枚
1953年:498枚
1954年:1808枚
1955年:901枚
1956年:1159枚
1957年:550枚
1958年:101枚
1959年:4710枚
1960年:2207枚
1961年:6982枚
1962年:9678枚
1963年:7342枚
1964年:11000枚
1965年:23000枚
1966年:3409枚
1967年:6431枚
1968年:540枚
1969年:540枚
1970年:425枚

以上を合計しますと9万枚強になります、皆さんはこの数字を見てどうお感じになるでしょうか、コインに関して知識のない方なら「9万枚もあるのか」とお感じになるかもしれませんが、この9万枚は決して多くはありません、例えばほぼ同時期にメキシコで発行された50ペソ金貨があります。

(メキシコで1921年から1947年まで発行された50ペソ金貨)

この金貨も40グラム以上ある大型でデザインもきれいなのですが、残念ながら発行総数は800万枚以上とペルー100ソルの100倍近い数字です、日本では近年「昭和天皇在位60年記念」という有名な記念金貨が発行されましたが、発行枚数は1000万枚を超えています。

これらのコインと比べるとペルー100ソルの少なさがおわかり頂けると思います。しかも1952年の126枚、1958年の101枚といった超特年がありますし、他に発行枚数1000枚以下の年だけでも6年号あります。

最近のペルー100ソル価格動向

ではこのコイン、ここのところどのように値動きしてきたのでしょう。不思議なことにこのコインは数年前まで地金価格+10%程度の値しかついていませんでした、仮に地金価格が25万円なら27-28万円が相場といったイメージです。

でも今年に入って2つの傾向が出てきたように思います、一つ目は状態の良いコインの値あがりです。

先月国内で開かれたオークションを例にとってみてみましょう、先月のオークションで僕が注目したのは1951年銘(NGC-MS66)の落札結果です、MS66はこのコインにしては良いほうですが、上記のようにこの年は8241枚も発行されています、スタートビッドは30万円でしたから、僕はそのあたりを加味して「36万円ほどが適正相場かな」とみていました。ところが驚いたことに落札値は58万円でした、オークション会社の手数料11%が加算されますので、落札者の総支払額は64万円以上にもなりました。

もう一例挙げさせていただきますと、今年7月の国内オークションです、僕が注目したのは1950年のMS-65PLです、PLはプルーフライクといって真新しい刻印で打たれたコインです、外見的には表面がプルーフのように鏡面状に輝いているのが特徴です。現物を下見して確かにきれいだとは思ったのですが、落札結果はなんと61万円で僕の予想をはるかに超えました。PLといっても65ですから、一定の摩耗やキズもありました、特に女神さまの顔にキズがあったので、僕から見ると少し残念なコインでした。それがハンマープライス61万円、総支払額ベースでは約68万円です。なお1950年銘の発行枚数わずか1176枚です、このコインの札が伸びた理由の一つはPLという希少性にあったと思いますが、同時に発行枚数の少なさも影響したと思います。

今後の相場をどう予想するか

上記の例から言えますが、いよいよペルー100ソルも、現代コインからクラシックコインへの階段を上がり始めたように思います、当然その過程で起きるのは相場水準の訂正です。考えてみれば1960年代は僕が生まれた時代で、この銘柄も僕と同じくクラシック世代へ仲間入りしつつあるようです。

同じく近年「現代コインからクラシックコインに仲間入り」したコインにどのような銘柄があるでしょう、例えば1935年発行の、ジョージ6世の5ポンド金貨の例が分かり易いと思います、このコインなど20年ほど前は地金型コインと呼ばれ、地金と同じく10万円ほどで買えたものです。発行枚数は5000枚台とそこそこ少ないのですが、いったん地金コインのレッテルを貼られてしまうと、なかなかそこから脱することはできません。それでも時間の経過とともに本来あるべき相場帯に移動するようで、いまではPR65程度の高状態なら200万円ほどの値が付きます。

(ジョージ6世の5ポンド金貨)

もう一つ例を挙げるなら、チェコで1929年から1951年まで発行された10ダカット金貨です、このコインも発行枚数が少なく全年号合わせて9000枚弱です、このコインも20年ほど前まで地金コイン扱いでしたが、今ではMS65くらいになりますと250万円ほどの値が付きます。

(チェコの10ダカット)

ペルー100ソルは発行枚数が、ジョージ6世やチェコ10ダカットの10倍以上もありますので、これらコインの1/3から1/2ほどの水準が妥当ではないかと思います、つまりざっと言えば80万円から120万円ということです。

ただしペルー100ソルならなんでもOKというわけにはゆきません、少ないといっても9万枚で、そこにはおのずと価格差が出てくるでしょう。すでに上記のように

  • 発行枚数が少ない年号
  • 状態の良いコイン

この2点を満たすコインが先駆けて値上がりし始めましたが、今後はこの傾向がより顕著になると僕は思います。「麦わら帽子は冬に買え」です。

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